◇先着250名限定『爆弾カロリーパフェ』を巡って、とある姉妹が高次元な追いかけっこしていた。
「せーの! 触ったら逮捕〜! パフェに手を♪ お、姉、ちゃん、ごめんなさ〜い!『ごめんなさい』が聞こえない〜? え〜! 粛正! パフェ神! フルーツモリモリレクイエム〜☆」
「待ちなさーい、ヴィブロス! 貴方、明日レースでしょォォォ!」
ぬかった。ヴィブロスのトレーナーさんと私のトレーナーさんの三人でヴィブロスを監視してたのに、一瞬の隙を突かれて逃亡を許してしまった。
マズい、非常にマズい。あの『爆弾カロリーパフェ』がヴィブロスのお腹に収まったら、明日のレースに支障をきたすかもしれない。けど今ならまだ間に合う。ヴィブロスが爆弾を食べる前にお姉ちゃんである私が止めなきゃ。
そんな覚悟も無常か。ヴィブロスを追いかけている内にとうとうパフェ屋へ迫ってきていた。初動で出遅れたせいでヴィブロスと私の間には未だ距離がある。詰みか……
「ん、あの見覚えのある2人がパフェ屋の席に座ってる……私達がコーディネートした服を着てるシュヴァルと義弟(シュヴァルトレ)くんじゃない!」
どうやら渡に船が私に巡ってきた様だ。この二人と協力すればヴィブロスを止めれるかもしれない! 私は声の限り力の限り二人に向けて叫んだ。
「シュヴァルー! ヴィブロスの爆弾(カフェ)を止めてぇぇぇ!」(圧倒的言葉足らず)
「えっ、姉さん……? ヴィブロス……?」
「爆弾だと!? 伏せろォォォ、シュヴァルゥゥゥ!」
私の叫びでシュヴァルの存在を知ったのかヴィブロスはシュヴァル達に突っ込んでいく。ほぼ同時のタイミングで何故か義弟くんがシュヴァルを抱えてテーブルの下へ消えていく……
「嘘っ……」
ヴィブロスの目の前には手付かずの『爆弾カロリーカフェ』が二つ。待って、お願いよ。食べないでぇぇぇ! 願いは虚しく、ヴィブロスは躊躇なく向かっていった。
「店員さん! シュヴァち達が食べてる『爆弾カロリーカフェ』をください☆」
「これが最後の一個となりまーす!」
シュヴァルのカフェを食べてしまうという私の予想が外れた。ヴィブロスはシュヴァル達をスルーしてそのままパフェ屋のレジへ直行していた。
「あくまで正攻法なのねヴィブロス! 良くも悪くも純粋で助かったわ。これならなんとかなる!」
◇
「せめてこのパフェは明日のレース後に食べなさい。いい?」
「ええ〜生殺しじゃん……」
「落ち込まないでヴィブロス。楽しみは後でとか言うじゃない。それに経験上、レース後に食べるパフェは絶品なのよ」
「ウーン、そうなのかな〜。お姉ちゃん……」
渋々だけどヴィブロスは納得してくれた様だ。私はひどくホッとした。トレーナーさんとヴィブロスのトレーナーさん。私、ちゃんとお姉ちゃんを遂行したよ……
「ト、トレーナーさん……いきなりこんな、抱っこ……ウゥッ」
「……爆弾は?」