タマ「ウチの頭上に謎の数字が表示されるようなった……」
タマモクロス2。
何故か、お昼頃からウマ娘達の頭上に数字が出るようになっていた。殆どのウマ娘は0な中、タマの頭上にはテカテカと2が白く光って居座っている。
「そういや頭上の数字は経験人数を表してるってのは、創作の鉄板じゃあ有名だな。あくまで一例だけどな?」
「なぁ〜!? ウチは潔白や! 今までそんなイカガワシイことなんかしとらん!」
とまあこのように、さっきからタマは必死に弁明してるものの、この焦りようからは怪しさしかない。こんな冷や汗かいて赤面しながら潔白を主張するなんて各方面に失礼だろう。
近くの娘を見てみる。タマの眼前でイかれた量の食事をしているオグリキャップは0。同じく山の料理を食らっているスペシャルウィークも0か。
「なんか言えやトレーナー!? コンニャロ、ウチを差し置いてジロジロとオグリを見よって…….オグリの数字0やて!?」
「やっぱり、過去にヤンチャしてたのかい? それとも家族を養うために……」
「ちゃうわこのドアホ、ボケナスニブチンスットコドッコイ!」
「わ、うるさ。冗談だよ冗談。タマの性分じゃ言いなりなんかにならないだろうし、逆に返り討ちにしてそうだもんなぁ。ん〜でもなぁ」
「ウチのトレーナーなら素直に信じてや。本当にこの数字に心当たりない、いや有るっちゃあるけど自慰だってトレーナーダシにこれ以上の回数してるしな……」
タマは珍しくシナシナなテンションだ。まあ無理もない。朝起きたら頭の上に気味悪い数字が表示されてた上、殆どのウマ娘は0なのにタマは2だからなぁ……
するとオグリキャップは口に食べ物を詰め込みながら何かを喋りだしたではないか。悔しいかな、とてもじゃないけど聞き取れない。
『食べてから喋れ』とタマからのツッコミを受けた彼女は律儀に食べ物を飲み込んだあと、タマの頭に指を刺してこう言った。
「タマの数字3になってないか?」
「はっ? ぎゃぁぁぁっっっっ!? なんで増えてるんやぁ!?」
濁声で頭を抱えながら涙目で発狂するタマ。俺の膝に座ってることを忘れてるのか滑り落ちそうになったので、彼女を後ろから抱き抱えたらおとなしくなった。
「なんで数字増えたんだろうなぁ」
ウーン、数字の増え方的に少なくとも男女の交わり回数では無さそうだけど。それじゃあこの数字はなんなのだろう? ていうかなんでウマ娘限定で表示されてるのか?
それを確かめるため、彼女達には悪いけど食堂内にいるウマ娘の数字を覗いてみることにした。
名前を知らないし関わったことも無いウマ娘は0〜10だった。でも名の売れた専属契約のウマ娘は違うようで、特にコパノリッキー、ファインモーション、あと留学生のヴェニュスパークは50以上。トウカイテイオーは100を超えている。
傾向としてはチームに所属してるウマ娘は例外除き大体一桁か0で、逆に専属契約を結んでるウマ娘に0の数字は誰も居なかった。
つまり、この数字と専属契約に何か関係あるのだろうか?
専属契約結んでてかつ、恋愛クソ雑魚ウマ娘なスマートファルコンですら1あるんだ。絶対何か関係ある。
「クッ、稀代の明太亭トレーナー3世でも手こずる難題でアリエール」
「……せやな」
あ〜、ツッコミ役に元気ないと調子狂うな。真面目に原因突き止めないと。
「もう無理やトレーナー! ウチ、こんなんじゃ外も出歩けへん!」
関連性はなんなのか思案していたところ、いきなりタマが俺の背中に飛びついてきた。トレーナー引っ付き族爆誕の瞬間である。
タマの頭上は4。うんなんかまた増えている気がする。
「ちょっと時間くれタマ。もう少しでこの数字の意味を解けそうなんだ。あーまあいいや。とりまこのままトレーナー室に行こう」
「うん……」
すっかりタマちゃんしおらしくなってるな。耳も尻尾もしょぼんしてるし可哀想になってきた。これは担当の精神的に原因解明を急がないといけない。
ただ運の悪いことに、道の真ん中でいちゃついているウザウマカップルに道を潰されていた。
痴れ者め、一体いつからここは婚活会場になったのだ。今から逆立ちで三点倒立してやろうか!?
結局、わざわざ遠回りしてトレーナー室を目指す羽目になってしまった。
「リッキー、ラッキー、私のダーリン!」
「勘弁してよ今日何回目のハグ? え、これも風水なの?」
コパノリッキー55→56。
「は?」
俺は試しに背中の住民と化しているタマを無理矢理引き剥がしたあと、すぐに自分から抱きついてみた。
タマモクロス4→5。
「……スッ〜。これだァァァァァァァァ!?」
◇
ハグ=ウマ娘の数字。このあとトレーナーは数々のウマ娘を実験し、疑念から確信へと至る。
そうして試しに、ウマ娘の数字とハグの関連性という論文を学会へ提出したところ全員に全拒否され学会追放。明太学者トレーナーは無事、ありし日のダーウィンとなった。
ウマ娘の頭上に表示されていた数字はいつのまにか無くなっていた。この数字の正体は、誰も知らない。