メジロパーマ『あなたは今どこで何をしていますか この空の続く場所にいますか』
「親父が倒れたから三日間実家へ帰省するってそう伝えたはずなんだけどなぁ……」
俺は愛バのお陰でそこそこ名が売れてるトレセン中央のトレーナー。職業が職業なのでトレーナーになってから親と疎遠になっていたのだが、先日親父が心筋梗塞で倒れたのでただいま田舎の実家に帰郷中なわけなのである。
そんな家族の一大事でも職業病なのか、担当ウマ娘のメジロパーマが心配でたまらない現在現状。
信頼できる親友ヘリオストレにメジロ家連中を差し置いて任せているものの、怪我してないか、ストレスは溜まってないか、誰かに襲われてないか、自分で確認出来ないのは結構辛い。
人類の叡智、LINEや電話が無かったら俺は多分今頃で発狂してるだろう。今でもギリギリなのだ。
「あ、早速パーマからLINE返信きたな。どれどれ、なが……」
◇
今まで私の心を埋めていたモノ
失って初めて気付いた
こんなにも
私を支えてくれていたこと
こんなにも笑顔をくれていたこと
失ってしまった代償は
とてつもなく大きすぎて
取り戻そうと必死に
手を伸ばしてもがくけれど
まるで風のようにすり抜けて
届きそうで届かない
孤独と絶望に胸を締め付けられ
心が壊れそうになるけれど
思い出に残るあなたの笑顔が
私をいつも励ましてくれる
◇
「俺別に死んでないんだけどなぁ。親父も運が良く助かったから、親父の容体確認したあと戻る予定組んでるが大丈夫かなぁ。そんなに精神面強い方じゃ無いし」
夜も遅いし明日、ヘリオストレにパーマの近況を聞いて状況次第では明日前倒しで帰る選択を取ろうと思い、今日はここで就寝した。関係ないけどyouという曲が延々と流れる夢を見た。
次の日、朝一番に親父が入院している病院へ行くとそこには、今日いるはずもないウマ娘がニコニコしながら椅子に座っていた。
「パーマ……?」
「うん、うん! やっと会えた……」
「2日過ぎてない気がするけど、パーマなんか涙目になってるし指摘しないでおこ。てか、学業やヘリオストレとの共同トレーニングはどうしたんだ? まさか全てほっぽり出して爆逃げ?」
「いやいや、今日はそもそも授業が無いし、トレーニングは午後からだからね」
「そうか。で、これが本題なんだけどなぜ親父の入院先にパーマがいるん? 実家は教えたけど入院先は教えてねえぞ」
「うん、お義父さんが入院してる病院は見当ついてたから。受付さんにはお義父さんの息子さんの関係者ですと言ったらすんなりと入れてもらえたよ」
「なんか凄い勢いで外堀埋めてるなぁ(遠い目)」
◇後にトレーナーの親父はこんなことを語ったという。『ワシは心筋梗塞で地獄の苦しみを味わってる最中なのに、その隣でイチャイチャしてるカップルが居座ってる病室という空間はおそらく史上初だからこれでノーベル賞受賞目指す』と。ノーベル賞は貰えなかった。