二次短編小説置き場ブログ支部byまちゃかり

主にウマ娘の短編を投稿してます。基本的にあるサイトからの自作転載となります。

シュヴァルグランと混浴温泉旅行〜蝶ネクタイにメガネをかけた少年を添えて

 古びた木の橋を渡って森の中を車で走らせる事数分。自分達は無事に温泉旅館へと到着した。

「ここが湯けむり温泉……トレーナーさんと一緒に……つまりデート?」

「あれシュヴァル? 急に顔赤くしてどうしたんだい? もしかして蚊にでも刺された?」


「い、いえ。大丈夫……(てことは、誰にも邪魔されずトレーナーさんと一晩中うまぴょい放題ってことだよね! いやっほー! 商店街ガラポン天井まで回して温泉旅行券確保しておいてよかった本当によかった!)」

 シュヴァルは何か企んでそうな薄ら笑いをしだし、しきりに鞄の中をチェックしだした。よほど楽しみにしてたんだろうなぁこの子。

「お、あそこで手を振ってるの女将さんかな?」

 古き良き旅館の外で自分達を迎えてくれた女将さんの第一印象はそう、それはタイキシャトルよりもデカいおっぱいボインボインな破壊的プロモーション! 

 さらに女将さん、浴衣ではなく何故か童貞殺しのセーターを着ているではないか。

 途端に女将へ敵意を剥き出しにするシュヴァルグラン。照れていたように見えたさっきまでの表情は一瞬にして消え去り、代わりに猛獣のようなプレッシャーを女将へ向けだした。

 しかし女将はシュヴァルの圧力を眉ひとつ動かさず冷静にフル無視。猛獣に威嚇されてるようなものなのに、何事も無いように仕事を真っ当している。さてはこの女将、頭のおかしい客の対応に慣れてるな?

「わざわざ遠出からいらっしゃいませ」

「ワァ、おっぱいプルンプルンだ……」

「ガルルルル!」

 ちなみに自分は童貞だ。今でこそシュヴァルと付き合っているとはいえ、本番は彼女の卒業後に取っとくと決めている覚悟を決めた童貞だ。

 ただ、今の女将を見て童貞の覚悟崩れそうになっている自分もいるのも事実。なんか女将見てると色々耐えれる気がしないし後でトイレ駆け込もうかな。


◇温泉


「いや、自分は男湯入るから……」グググッ

「うるさいですねトレーナーさんは大人しく僕と混浴してその締まってる身体を曝け出したらいいんです!」グググッ!

「今日のシュヴァルいつになく強気、あっ」ググッ……

 15分以上粘ったものの抵抗虚しく、ウマ娘特有の馬鹿力で男湯入り口の柱から手を離してしまった自分はシュヴァルに引き摺られる形で混浴温泉へ入ることになった。

 もちろん、タオルは巻いて入った。本当に勘弁してほしい自分が社会的に死ぬ。今更感あるけど。


「誰もいないな〜ほぼ貸切みたいなものか」

 なるほど確かに温泉浸かりながら秘境を見れる。伊達に湯けむりじゃない。

「は、はい……(トレーナーさんのあそこ当たってる。実質うまぴょいじゃないか。ありがとう三女神様!)」

「お姉ちゃんもしかしてウマ娘〜?」

「えっ、えっとそうですね……はい」

「坊や、お母さんと迷ったのかい?」

 シュヴァルを膝の上に乗せつつ温泉を堪能していたそんなひととき。それをぶち壊したのは小学生入りたてぐらいの少年。突然少年はシュヴァルに話しかけてきたのだ。

「親はね〜今は別の所にいるの〜」

「トレーナーさん……これって、どうしたら」

 まったく、溺れるかもしれない子供1人にして親は何をしているんだ。まさかサウナに入ったんじゃなかろうか?

「仕方ない。もし溺死でもされたら後悔しても仕切れんし、ひとまず受付行って坊やを預かってもらうしかなさそうだ。それでいいなシュヴァル?」

「は、はい!」


『江戸川コ〇ンくんの保護者様は受付までお越しください!』

 全体アナウンスで坊やの保護者を呼び出した。時期に受付に来るだろうから、自分達に役目は無さそうだ。

「中途半端に温泉出ることになっちゃったけど、今からまた入る?」

「いえ、その前に夕ご飯が待っていますからそれを先に頂いちゃいましょうよ。精のつく料理ばかりですからそのあとに……」


「大変だべ!? 田中さんがナイフで刺されて殺されてるべ!」


「「えっ?」」


「受付の人! なんか旅館から帰る唯一の橋が焼け落ちて帰れなくなってんだけどどうしてくれんのよ!」


「「はっ?」」


 山の中にある旅館で田中さん殺人事件が起きた。さらに、唯一旅館の架け橋となっていた橋も何者かによって焼け落とされてしまったらしい。

 騒然とする客達。それは自分達も例外ではなく、特にシュヴァルグランはガタガタと震えてしまい布団を頭から被りながらぼくの背中にしがみついている。

 自分はシュヴァルを背負いながらも、現状の最適解を思案していた。思えばついさっき受付に送り届けた坊やの名前は、殺人事件を引き寄せると噂の探偵と同じ名前だ。いやまさかね……?

 結論、シュヴァルと大人しく部屋に引きこもって騒動の終息を待つって考えに至った。騒動に巻き込まれたら、多分命が何度あっても足りないだろうから。

「よし、自分らは殺人事件なんて物騒なこと関係無いし割り振られた部屋に戻ってゆっくり引きこもろっか」

「ガタガタガタ……」


「待ちなウマ娘とそのトレーナーさんよぉ! アンタらも被疑者だよ」

 おお、神よ。お天道様は自分らを許してくれないらしい。だって、旅館に偶然居合わせた蝶ネクタイにメガネの小学生に目をつけられてしまったのだから。

 自分とシュヴァルは覚悟した。命を落とすかもしれぬ嫌な方面の、そんな覚悟を。