トレーナー「自分はこれから(シュヴァル家の家庭訪問に行って)殺される」シュヴァル「えっ……」
シュヴァルの実家には大魔神と童貞殺しと噂される姉妹のギャルがいるらしい。
自分は情けないことにコミュ症で童貞だ。怖くて怖くて仕方がなかった。
そんな情報を耳にしてたので今までは事あるごとに訪問を断ってきた。しかしついにやってきてしまったのだ。三年目のどっかで行かなければいけない強制家庭訪問とやらが。
「トレーナーさんが……殺される?」
「ああ、戦場でおそらく(ギャルに)グチャグチャに尊厳を踏み躙られて殺される。今日は殺される日を決める会議さ」
家庭訪問は戦場。戦場に行くことをシュヴァルに告げた。最初は呆然としていたが徐々に顔面蒼白になって嗚咽しながらポロポロと泣きだした。自分も泣いた。
決まってるものは仕方ないので、この日はシュヴァルと日程の調整をして終わらした。このあと特訓できるような雰囲気でもなかったし自身もズタボロだったのでこれは仕方ない休みだ。
「……トレーナーさんが、死んじゃう」
そしてあっという間に運命の日。自分は行きたくないオーラを漂わせながらシュヴァルの実家へ訪れていた。
「あー、なんでシュヴァルもきたの?」
ついでにどっかで戦争でもするんじゃないかと思うくらいの完全武装と、さらにレースで出すようなオーラを纏ったシュヴァルを隣に据えて。
「だ、だって僕は納得できないから。どうしてトレーナーさんが殺されなきゃいけないのかって。だからあの日の後にダイヤさんと話して決めたんだ。ダイヤさんは上層部に掛け合って、僕はトレーナーさんを守ると」
雷槍と金属バットを手に持ち、悲壮な表情でこう語ったシュヴァル。
ウーン、シュヴァルは何か勘違いしているようだ。今から行くの家庭訪問で本物の戦場じゃあない。あとなんだこの物騒な武器は、しまいなさい。
いやでも……シュヴァルが隣にいたらギャル達も下手に動けないだろうし、食い殺される事はないのでは? そうと分かれば都合良し。シュヴァルも同行させよう。
「まあいいか、心強い限りだよシュヴァル。是非守ってくれ」
「それで……どうして僕の自宅の前に?」
作戦を立てる暇なく玄関の扉は開き。そこには一人の大男とギャル姉妹がニコニコな笑顔で俺たちを待っていた。
「トレーナーさんお待ちしていました。さあさあここで立ち話もなんですから中に入った入った!」
「あら、シュヴァルも来てたのね」
「お姉ちゃん、戦場から帰ってきたの?」
ああ、出会ってしまった。メジャーの殺人フォーク投げ大魔神と、童貞殺しのギャル姉妹。
やっぱり今日は命日なのだろう。さようなら人生。来世は蝿で生きていきたいなぁ。
そんな事はなかった。
「萎縮させてもうしわけないガハハ!」
「でもさぁ〜、ギャルみんな淫乱という先入観は酷いよねぇ〜お姉ちゃんもそう思うよねー?」
「あっ…….アハっ、ソ、ソウダネハイ」
大魔神さんやギャル姉妹は予想と異なりいい人達だったのだ。ギャル姉妹のノリについていけないのはご愛嬌だとして、自分的には非常に助かった。
家庭訪問も滞りなく終わり、あとは少し休んだら帰ろうという感じだ。よかった何事もなく終わりそうで。
「ト、トレーナーさん……ちょっと少し二人でお話ししてもいいですか?」
「ん? あそこの部屋?」
すると家に入ってから空気になっていたシュヴァルが震えた声でそう言い、自分をある部屋へと誘導していく。
そこはトレセン学園に入る前まで使っていたという勉強部屋であった。シュヴァルはドアに鍵をかけた後、俺に飛びついてきた。
「最低ですよトレーナーさん……僕がこの数日間どれだけ苦しんで泣いたか。ダイヤさんやクラウンさんの力を借りて武装までして覚悟してきたのに……」
割と強い力で俺の胸をポカポカして泣きだしたシュヴァル。怒る理由はごもっともでぐうの音も出ない。この数日間自分のことで精一杯になって、シュヴァルの心境を察することが出来なかった自分が嫌になる。
「ごめんよ本当に。そういえば説明した時一回も家庭訪問という単語使ってなかった。余計な心配をかけてしまってごめん」
今日、学んだこと。報連相はしっかりと、大事な単語を端折らない。あと余計な先入観は持たない方がいい。このできこで自分はそう学んだ。
このあとはまあ、定期的に自分とハグしないとダメになってしまったシュヴァルやら、サトノ家勢力の暴走とかあったけどこれはまた別のお話ってことで……