二次短編小説置き場ブログ支部byまちゃかり

主にウマ娘の短編を投稿してます。基本的にあるサイトからの自作転載となります。

担当の男性観を守りたかったトレーナーと手遅れカレンチャン

 カレンチャンの専属トレーナーになってから3年目のある日。ウマ娘とは適切な距離感を保つ事が大事だと酒仲間の先輩に教わった。

 今更何を当たり前のことを、と思ったが彼女達との距離感を誤り寿退職するトレーナーはそこそこいる。実際新人で右も左も分からない自分を世話してくれたある先輩も2年前に退職していった。

 先輩によると思春期のウマ娘達に理解を示し、最適なケアを施し続けることで彼女達が距離感を誤り、またトレーナー側も入れ込み過ぎて気が付いたら両想いになっていた、という事だとか。

 両想いならまあいいのでは。とは思うものの確かに人生経験の浅い女の子の男性観を壊してしまうのは良くない事だ。

 ただ、自分の担当は色んなイケメンやハンサム男に靡くことが一切無かったカレンチャン。彼女は男性観どころかそもそも男性自体に興味があるのか疑わしい側面がある。

 なら、深刻に考えなくてもよさそうだ。彼女に男性観自体が無いんだから対策以前のお話だし。男性より同姓が好きだと仮定すれば、彼女に男性観が無いのも頷ける話だしな。

 

 数日後、先輩は「もう手遅れだから頑張ってくれ」と言い残し担当ウマ娘に引き摺られてフェードアウト。この日を境に彼の姿を見た者はいない。

 

ファルトレ「いや、カレンチャン絶対君のこと好きだって。態度とかあからさまだもん。全く、依頼人に頼まれて君の相談役を受けたのに案外解決出来る内容だったの拍子抜けしたよ」

カレントレ「カレンは俺以外でもそんなもんだ。彼女は好き好きオーラを巧みに操り、相手によって態度を変え、全方位にカワイイを投げまくってる悪魔的インフルエンサーなんだ。いやあ……自分も勘違いしそうで困るなぁアハハ……」

「尻尾絡ませたり抱きついたり手を繋いだり、最近は2人でキャッキャウフフしながら遊びに行った写真をウマスタに上げたり、匂わせ投稿したりしてるけど。それを君以外の他のファンにしてるわけないでしょ」


 スマートファルコンのトレーナーは身内に鈍感で他人の関係には敏感であった。スマートファルコンも彼女なりに頑張ってるよ気づいてくれ。恋が実らなくてクワガタになってるから。


「素直になりなよ。僕でもカレントレに対するカレンチャンの好意が目に見えて分かるのに何故知らないふりしてんのよ」

「……ふぅ、知らないふりか。知らないふりだなぁ。ていうかお前、その洞察力を少しは自分の担当ウマ娘に活かしてやれよ」

「? なんのこと?」

「クソボケめ。はぁ……分かってっんだ。自分もうすうす戻れない所まで来てるんだなって。まさか男性観が無いんじゃなくてもうとっくの昔に壊れてたとか思わんじゃんか。こっちも現実逃避してないと辛いんよ色々と。最近は髪や尻尾の手入れをやらされたり、結婚届にサインを要求されてるしな」

「好意分かってるならなんで付き合ってないのよ?」

「正気かお前。普通、教師と生徒が付き合ったらダメだろ」

「ここはトレセン学園だけど?」

トレセン学園は婚約会場じゃないんだわ。倫理的にアウトだろ。普通の学校ならバレたら懲戒処分に再起不能。嫌だわリスクしかない」

トレセン学園は容認してるしウマ娘は違うって世間も受け入れてるし大丈夫だと思うんだけどね」

「……カレンの男性観は本当に壊れてるのかな。まだ直せないだろうか」

「壊れてるよあの遊園地の時点で」

 

 
「そうだよな。ま、責任取るしかないか。丁度カワイイお嫁さんが欲しい所だったし」

「やっと決断したね。よかったよかった僕も応援するよ」

「よし! 相談に乗ってくれてありがとう。それじゃ、カレンのとこに行ってくる!」

 

「行ってらっしゃい〜。よし、行ったね。もう出てきていいよ。茂みに匍匐前進の格好で隠れてるCureenくん」

◇カレントレを見送ったファルコトレがとある茂みに声をかけると、その茂みがモゾモゾと動きだし、程なくして爆発したかのようにあちこちへ飛び散っていった。残ったのは葉っぱまみれになってる芦毛ウマ娘である。

カレン「うまく行きましたね。お兄ちゃんの説得役に買って出てくれてありがとうございます! これでカレンはお兄ちゃんと一緒になれる……」

「こんなにあっさり決まるとはね。なんにせよよかったよかった。これで今月の恋のキューピットノルマ達成! ノートも分厚くなって善行楽しいなぁ!」

カレン(え、この人いきなりテンションがおかしくなったんだけど。怖。もしかして最近の学園で生徒とトレーナーの恋愛が流行ってるのってこの人が原因なんじゃ……まあいっか★)

 

 先輩の忠告虚しくカレンチャンの男性観は最初から壊れていた。男性に興味がないわけではなく同性に興味があるわけでもなく、既に自分が壊していたのだ。

 回避方法は自分がカレンチャンのトレーナーになった時点でなかったのである。